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17 エピローグ [近現代考古学]

Chapter17 Epilogue.(Ian Hodder):189-191.

I.ホダー氏は、アメリカ・スタンフォード大人類学部の所属、そして本論は、本論文集の最終章、まさに「納め口上」である。

近現代考古学の目的は、学問の定義と存在に関する異議申し立てそのもの(challenges the very definition and existence of the discipline)である(p.189)。
考古学という学問は、現代に対する探求の特殊な形(a particular mode of inquiry into the present)として、再定義しうる。考古学は物質痕跡の体系的記録化(the systematic recording of material traces)あるいは脈絡に関連した対象物の研究(the study of objects in relation to contexts)、さらには「ものの表面下を掘り出す」(digging beneath the surface of things)ことを通じて他の諸学問を結びつけるような新しいタイプ(の学問)を作り出すものとして再定義される。そうしたとき、明確に残りうるものとは、方法(method)、問いかけの特殊な形(a particular mode of inquiry)でしか有り得ない(p.190)。

どこかで読んだ覚えのある文章である。

「つまり古代以降、考古学は歴史叙述に関するひとつの手段(方法)としての性格をおびるわけであるが、その性格が決定的となるのが、近・現代においてなのである。
こうして近・現代考古学は、自らもつその革新性ゆえに成立と同時に自らを解体し、近・現代史叙述の一方法(手段)として脱皮をはかることになるが、この点は先にも述べたように、考古資料だけによる近・現代史の総体的な叙述が不可能な以上致し方のないことである。すなわち、近・現代考古学イコール「方法としての考古学」の成立である。」(福田 敏一2005『方法としての考古学』p.111)

両者が述べる脈絡は、いささか異なる。
特に後者が「時間遡及相関価値付与説」を採用している点において。

しかし、両者が奇しくもと言うか当然ながらと言うか、方法(method)あるいは問いかけの形(mode of inquiry)に近現代考古学の最大の特性を見出している点は、留意されなくてはならない。

同時代生活の考古学(the archaeology of contemporary life)は、同一性(identity)・商品化(comodification)・階級(class)・ジェンダー(gender)といった現代の様々な理論化に対して全面的に関係する。ゴミの廃棄(garbage disposal)から民族浄化・人権(ethnic cleansing and human rights)に至るまで、社会的倫理的諸問題と関係する。考古学は技術(technique)を提供する。そしてその解釈は直ちに広い意味での文学研究(a broader literature)と関わらざるを得ない(p.190)。

「(前略)考古学の世界において問われているのは、事象そのものを認定するにせよ、それを解釈するにせよ、知識の多さや細かな専門性ではなく、その人が生活世界とのあいだにもつ実存的な関係性や歴史事象に対する真摯な問題意識に裏打ちされた謙虚な研究姿勢である。」(福田2005:p.28)

 


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