SSブログ

器官なき身体 [遺跡問題]

限りなく最低賃金に近い数字で泥だらけになりながら働いている我が愛すべき「ジョーンズ」たちから、宿題をいただいた。

「丘に掘られた横穴は遺構ですけど、その丘は遺跡ですか?」

う~ん、これは難問である。
崖から10m横に掘られた地表面から5m下の横穴は、平面図では点線で記されるだろう。横穴直上の場所が横穴構築から全く人為的な活動がなされずに何の痕跡も記されなかったとしたら、そのエリアにおける地表面上の人為痕跡は、横穴の開口部分だけということになる。

あるいはそれが網の目のように広がる防空壕だったら、どうなるか。
足元に広がっている(かもしれない)未だ知られることのない過去の痕跡群。

「ダム」(貯水池)というものを考えてみよう。もちろん人工的に構築されるのは、堰堤のみである。しかし、堰堤だけがダムなのか。満々と水を湛えた「人造湖」と称される部分を含めて「ダム」なのではないか。

堰堤を築いて水を湛えるのが、ダムである。反対に堰堤を築いて水を排出するのが、干拓地である。あるいは埋め立て地である。
同じ水を堰き止めるという堰堤の機能は同じでも、一方は水を溜め、もう一方は水を排出する。水が排出された「元海底」である干拓地は、どうなるか。そこに人為的に土壌が運び込まれたら、すなわち埋め立てられたら、その土地は<遺跡>となるのか。すなわち、神田・日本橋から銀座・新橋・汐留を経て浜松町にまで続く「日比谷の入り江埋め立て<遺跡>」の出現である。

八郎潟<遺跡>、ポートピア・アイランド<遺跡>、そしてオランダという国には、どのような<遺跡>が立ち現れるのか。

こうしたことを考えていくと、どこからどこまでが<遺跡>なのかとか、どのようなものが<遺跡>であるのか、などという規定がいかに意味をなさないかということがよく判る。
人間が作用したあらゆるものが土地改変の結果であり、あらゆる場所は土地改変の集積そして相互作用なのである。
今まで、先史的な枠組み内で考えていた限りでは「確かなもの」と感じられていた従来の考古学的諸概念が、がらがらと崩れていく。あるいは、様々な点でつじつまが合わなくなっていく。もっともらしい教科書的な文章が、怪しげに見えてくる。


nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(1) 
共通テーマ:学問・資格(旧テーマ)

nice! 0

コメント 2

かつらこ

こんばんは。
お元気ですか?
こちらは変わらずです。
ところで応神天皇と仁徳天皇は同一人物ですか?
電車のオヤジ達が激しく論争でした。
埋分関係者かしら?
by かつらこ (2006-02-28 19:54) 

五十嵐彰

「一つの命題は、一つの指示対象をもっていると考えられる。つまり、指示対象あるいは志向性は、命題の内在的な定数であるが、それをみたすことになる(あるいはならない)ものの状態は、外在的な変数である。しかし、言表に関しては事情が異なる。というのは、言表は、指示されたものの状態ではなく、反対に、言表そのものから派生する「言説の対象」をもっているのだ。これはまさに、根本的な機能としての言表の限界で定義されるような派生的対象である。だから、異なる志向性のタイプを区別して、そのあるものは物の状態によってみたされ、また別のものは一般に虚構的あるいは想像的であったり(私は一角獣に出会った)、あるいは一般に不条理であったりして(四角い円)、空虚なままにとどまる、といったりすることは何の役にも立たない。」(ジル=ドゥルーズ『フーコー』)
by 五十嵐彰 (2006-02-28 21:08) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1