SSブログ

寺田1979「アンデス調査と発掘品返還のこと」 [論文時評]

寺田 和夫 1979「アンデス調査と発掘品返還のこと -東大資料館収蔵資料(9)-」『UP』第76号、東京大学出版会:1-7.

「核アメリカ調査団の活動開始を記念して、私としては、従来の調査団の仕事に、ある種のけりをつけたかった。それは、今まで怠っていた遺物の返還である。ペルー側から正式の要求はなかったのだが、以前から現地の学者たちから「自発的に返還する、という外国の調査団のみせたことのない善意の行動」をやってみるようにすすめられていた。あれほどの苦労をして発掘した資料でもあり、その中にはたいへんな時間をかけて復原した土器も多い十トンに余る発掘資料は、梱包と運送にも大金を要するし、返還したとしても、ペルー側には宝の持腐れのようなものも多い。そこで、コトシュの完形土器、精選した土器サンプルなどの文化遺物を国立博物館に納めることで、一切の返還はすんだという形にしてもらう了解をとり、調査団の器材といっしょに船に積んだ。」(6.)

表題の「発掘品返還」の語に誘われて手にしたのだが、細部で引っ掛かることはあったにしても当たり前のことしか書かれてなかった。

続きを読む


nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

<遺跡>問答 [遺跡問題]

A:考古誌、一般には発掘した成果を報告する刊行物なので「報告書」と呼ばれている書物なんだけど、その多くの書名は「〇〇遺跡」となっているのは、なぜなんだろう?
B:そんなアホなことを考えているのは、あんたぐらいだろう。
A:そうだろうか?
B:そうだよ。当たり前だろ。「遺跡」とされているところを掘って、出てきた物を報告しているんだから、「〇〇遺跡」の報告書なんだよ。

続きを読む


nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

2021『三田二丁目町屋跡遺跡』 [考古誌批評]

トキオ文化財株式会社 編集 2021『三田二丁目町屋跡遺跡 -慶応義塾大学三田キャンパス東別館建て替え工事に伴う埋蔵文化財調査報告書-』

落手してから1か月ほど取り扱いに窮して、食卓の上に置かれたままになっていた。
いつまでもそうしておけないので、ようやく重い腰をあげることにした。

単独で論評しても深まらないので、10年前に刊行された同じような考古誌(慶応義塾大学文学部民族学考古学研究室・共和開発株式会社 編集 2011『会津藩保科(松平)家屋敷跡遺跡 -慶応義塾中等部新体育館・プール建設計画に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書-』)を参照軸とする。
こうした比較を通じて、本書で何が書かれているかということよりも、本書では何が書かれていないかということが明らかになるだろう。

論点は3点ほどである。

続きを読む


nice!(2)  コメント(1) 
共通テーマ:学問