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田中2019『「共生」を求めて』 [全方位書評]

田中 宏(中村 一成 編)2019『「共生」を求めて -在日とともに歩んだ半世紀-』解放出版社

闘い続けてきた人へのインタビュー記事を一書にまとめたものである。こうした「闘い続けてきた人」に接すると、ただただ畏敬の念に打たれる。ポイントは、何に対して「闘い続けてきた」のかという点である。

著者の「闘い続ける」原点は、1960年代のアジア人留学生との出会いである。

「夏休みで私も帰省する。声掛けたら彼も来るって言うから、岡山の田舎に連れてって。田舎の村にインド人が来ることはない。同級生は結構いるし、ものは試しと思って、公民館で七、八人集まって雑談する場を設けたんです。それで懇談になって若い村の人が、「日本に来て一番驚いたことは?」と聞いたんです。そしたら彼は「天皇が健在で、首都東京の真ん中にあんな大きい居を構えていることです。私は、天皇はすでに退位しているか、どこかの離れ小島に隠居していると思ってました」って答えた。「だってあの戦争は多くのアジアの人びとが犠牲になったし、あなたたちも天皇の戦争でいろいろとひどい目に遭ったでしょ。皆さんの家族にも戦死した人がいるのでは? その責任を天皇が取らないのは理解できない。そうじゃないですか?」って。」(11-12.)

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