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比丘尼橋遺跡C地点 [考古誌批評]

2020『比丘尼橋遺跡C地点』東京都埋蔵文化財センター調査報告 第356集

ようやく「ビクニシー」が出た。(発音に注意。第1音に強調が置かれると、地下鉄などに落書きする某有名画家と紛らわしい。正確には「ニ」と「シ」の間に半拍が置かれる。)

最初は今から6年前、2014年の秋に練馬区の現場に連れていかれて、後にA区となる区立公園部分を2ヵ月余りで調査するようにと言われて、いくら何でもそれは無理と言って、実際に大量の遺物が連日出土する状態で、年を越して何とか3月末日までとしてもらったが、それも土壇場で2月末日までに切り詰められて、最後は殆ど満足のいく調査が出来なかった苦い思い出が残る。

それからズルズルと足掛け6年、国の本体工事部分は何とか終了したが、都の付帯工事部分は未だに調査未了部分が残り、未報告である。

【第1分冊】Ⅰ 発掘調査の概要 Ⅱ 遺跡の位置と環境 Ⅲ 層序 Ⅳ 遺構と遺物 1 旧石器時代 1)1群(Ⅲ層~Ⅳ層上部:836点) 2)2群(Ⅳ層中部:21,220点)
【第2分冊】3)3群(Ⅳ層下部:8,876点) 4)4群(Ⅴ層~Ⅵ層:474点) 5) 5群(Ⅶ層~Ⅸ層:636点) 6)0群(一括:147点)
【第3分冊】2 縄文時代 3 近世以降 Ⅴ 分析 1黒曜石原産地分析(池谷)2痕跡分析(御堂島)3不明遺物分析(河原林) Ⅵ 総括

Ⅵ 総括の内容細目は以下の通り。
1.単位設定 1-1. 遺跡と包蔵地 1-2. 遺物群区分(垂直方向) 1-3. 集中部区分(水平方向) 2.接合関係 2-1. 2群(石器接合) 2-2. 2群(礫接合) 2-3. 2群(石器・礫接合) 2-4. 3群(石器接合) 2-5. 3群(礫接合) 2-6. 3群(石器・礫接合)2-7. 小括 3.出土石器 3-1. 有樋型尖頭形石器 3-2. 錐形石器 3-3. 大形石刃石器 3-4. 角錐形石器 3-5. 斧形石器 3-5-1. Ⅳ層出土 3-5-2. Ⅸ層出土 3-6. 前半期黒曜岩製ナイフ形石器 3-7. 特異な搬入品 4.終わりに

高速道路のインターチェンジ建設に起因する4年間におよそ7,500㎡を調査し、旧石器資料に関して言えば出土石器数5,260点・出土礫数26,929点となり、いろんなものが出土したが、一番の売りは冒頭カラーページで紹介した所謂「カエル石」である(iii「写真13」)。

知る人ぞ知る「比丘尼橋」は、日本の旧石器調査史上に燦然と輝く栄えある名称である。
今から半世紀前の1970年に関越道の建設に伴い340㎡が調査されて、『世界考古学事典』(1979:630頁)にも「オリエイ(オリジナル・エイト)」として紹介されている(A地点)。
1988年から92年までの5年間には、外環道大泉以北として7万4,400㎡の広大なエリアが調査された。5頁にわたる作業員リストが圧巻である。この頃は、日本の埋文調査のある意味でピークでもあった。
その間の1991年には、同時並行的に別組織によって調節池部分800㎡が5ヶ月にわたって調査された(B地点)。
そして今回の外環道大泉以南7,500㎡が3年間調査された訳である(C地点)。
「比丘尼橋」を巡る調査史は、日本の旧石器調査の歩みを端的に表現しているとも言えよう。

6年の間にいろんなことがあったが、今となってはみな良い思い出である。
本書のキャッチコピーは、「アナログ・トレースによる都埋文最後の考古誌」である。


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