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五十嵐2019e「ピョンヤンとケソンを訪ねて文化財返還問題を考える」 [拙文自評]

五十嵐 2019e「ピョンヤン(平壌)とケソン(開城)を訪ねて文化財返還問題を考える -「想像力」と「強さ」-」『共に歩む』第123号、障がいを負う人々・子ども達と「共に歩む」ネットワーク・会報:7-13.

あちこち(2019年5月31日:東京大学大学院総合文化研究科グローバル地域研究機構 韓国学研究センター、6月15日:韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議 総会、6月23日:由木キリスト教会 夏季交流会)で話した内容が文字となった。

「代替わりで騒々しい春の10連休に日本を脱出して、文化財返還運動の仲間たちと朝鮮民主主義人民共和国を訪ねてきました。朝鮮民主主義人民共和国、日本では一般に「北朝鮮」と呼ばれている国ですが、向こうではこうした表現は避けられています。英語表記では、Democratic People's Republic of Korea 略称は「DPRK」、日本語標記の略称は「共和国」です。「コリア」という言葉は、北では「朝鮮」、南では「韓国」と訳されています。」(7.)

こんな基本的なことすら、行く前には意識していなかった。
分断されている北と南の英語表記は、韓国は、Republic of Korea だから、それに D(民主主義)とP(人民)を前に付ければ朝鮮(北)となる訳である。
日本から韓国への旅行客数は年間およそ300万人、共和国への旅行客数は年間およそ300人、北への訪問者は南への訪問者の1万分の1!である。
なぜか? それは日本国が経済制裁に伴って渡航自粛要請を行っていることによる。
そもそも日本と共和国で国交が樹立していないことが大きい。

「共和国と国交がない国は、日本や韓国、台湾、アメリカ、イラク、サウジアラビアなど36ヵ国です。国連加盟国193ヵ国のうち全体の2割弱にあたります。それに対して共和国と国交がある国は、ロシアや中国をはじめとしてEU諸国、東南アジア諸国など164ヵ国です。国連加盟国のおよそ8割が承認していて、認めていないのはアメリカの影響力が強い国々であることが分かります。」(7.)

行って驚いたのは、行動の自由が極めて制限されていることである。指定されたホテルからは自由に外出できない。食事も指定された店にしか行けない。町の人たちと交流することもできない。
ある人によれば、これも日本と共和国との間に国交がないためであり、国交があるヨーロッパやアジア諸国の旅行客は、もう少し行動の自由があるとのことである。
何よりも日本と共和国で国交を樹立することが優先的な課題である。そしてその過程において必然的に課題として浮上してくるのが、文化財返還問題である。そのための訪朝であった。

「敗戦後、日本は戦時期に占領地から日本に持ち込んだ様々な物資、金塊や自動車やミシンなどをそれぞれの国に戦時賠償として返還しました。そかしその作業は占領軍(GHQ)の指令のもとでなされたもので、日本が自発的に行なったことではありませんでした。連合国を構成していた中国(中華民国)に対してはこのように不十分でしたが、形ばかりの返還がなされました。しかし連合国を構成することのなかった朝鮮については、その要求が取り上げられることすらなく、南側半分については1965年の国交回復に伴って僅かの文化財が返還されましたが、北に対してはいまだにほとんどなされていません。これから日本が「条件をつけずに」共和国と交渉して国交の回復にむけて話し合いがなされるのならば、戦時期に日本にもたらされた文化財の返還作業は最重要の課題となることは間違いありません。私たちは、自らの国が犯した事柄、そしてそのことを可能にした私たちの心に巣食う「帝国主義的欲望」あるいは「異国の<もの>を欲する欲望」について、よくよく考えなければなりません。」(13.)

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180-0021:武蔵野市桜堤1-1-7-804 日本キリスト教団 調布柴崎伝道所 青木 道代
あるいは私に連絡頂ければ、pdf資料を送信いたします。

本ブログも気づいてみれば、本記事にて記念すべき#1000本目である。
始めた当初は、まさかこれほど続けることができるとは思いもしなかった。
しかし今や生活の一部、それも欠かせない一部となっている。
いつまで続けることができるか甚だ心許ないが、気力・体力が続く限り続けようと思う。
ますますのご支援をお願いいたします。

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