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世界史の中の文化財返還問題を考える [研究集会]

公開シンポジウム 世界史の中の文化財返還問題を考える -2018フランス政府報告書と対馬仏像返還問題を中心に-

日時:2019年6月15日(土)13:00-17:20
場所:大阪経済法科大学 東京麻布台セミナーハウス 2F 大研修室
主催:韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議

「昨年11月にフランス政府が発表したアフリカ旧植民地への文化財返還を打ち出した報告書は、内外に衝撃を与えました。ドイツやオランダでも連動した動きが見られます。他方、東アジアとりわけ日本では、文化財返還問題への理解が乏しく、日韓では深刻な葛藤が続いています。打開の道を識者とともに考えます。」(主催者案内チラシより)

第1部 13:40-14:40 フランス政府報告書について
 2018フランス政府報告書についての考察 -フランスのアフリカ文化財返還政策の意義と課題-(森本 和男)
第2部 14:50-17:00 対馬盗難仏像返還問題について
 ① 対馬から見た仏像盗難問題の歴史的背景(俵 寛司)
 ② 釜山から見た対馬仏像盗難問題(廣瀬 雄一)
 ③ 国際法から見た仏像盗難問題(戸塚 悦郎)
第3部 17:00-17:15 訪朝報告(五十嵐 彰)

第1部は、2018年11月に発表された『アフリカ文化遺産の返還 -新しい倫理関係に向けて-』(Rapport sur la restitution du patrimoine culturel africain. Vers une nouvelleethique relationnelle)という報告書の解説である。マクロン大統領の「アフリカの遺産は、ヨーロッパの博物館の囚人であってはならない」との言葉に、そのスピリットが集約されている。42箇所にわたる参照アドレスが公開されているので、各自原文にあたって詳細を確認することができる。

第2部は、マクロン報告書が公表されたのと同じ2018年11月に釜山で開催した対馬仏像ワークショップの第2弾である。廣瀬氏は、その時に司会役を務めて頂いた。韓国側の識者は、日程の都合がつかず参加することが叶わなかった。
俵氏は、2019年5月の『考古学ジャーナル』の特集号「対馬の考古学の最前線」を編集された対馬考古学の第一人者であり、ベトナム考古学にも造詣が深い。第1部と第2部の橋渡しをして頂けることだろう。
戸塚氏は、国際法の専門家であり、話題の「主戦場」にも出演されていた論客である。2018年10月の韓国大法院が徴用工裁判で示した「植民地支配の不法性」という解釈を下敷きにすれば、文化財返還問題は「日本側の文化財取得の合法性について日本側が立証責任を果たさなければならなくなる」という。根本は1905年11月の「日韓協約」が無効であるという点にある。日本側の立脚点が崩壊する重大な問題提起である。ポイントは、不法・合法の挙証責任が転換するという点にある。

第3部の結論の一つは、以下の引用文に明らかにされている。
「占領下日本でアメリカ人の考古学者が、銃を持ったMPの護衛下に全国各地の寺社や、古墳や、御陵や、墓所を片っぱしから掘りまくって、日本人学者を寄せつけず、出土品から仏像、宝物から、鳥居までGHQに持ち込み、またアメリカ本国に送ったとしたら、どういう感じだい? 総督府のうしろだてを得た帝大の先生がたが、天皇家や財閥の資金援助でやった学術研究とは、さしずめそんなもんじゃないのか。戦争をやって敗けた場合は、まだあきらめもつくが、日韓一体などと片方ではやしながらの仕業だからな。しかし、この学術調査は公による文化財の発掘だが、さらにくわえて非合法の盗掘がある。あちこちの古墳が、次から次へと盗掘者たちの手であばかれ、破壊されたんだ。そして結果としては、京城や平壌、開城、仁川、大邱、釜山などの街に、日本人骨董商が軒をつらねて盗掘品をあきなうことになる。」(五木 寛之1981「深夜美術館」『五木寛之小説全集(第28巻)』講談社:237.(1975『小説現代』7月号~9月号))

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