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2018c「鉛筆で紙に線を引く -考古学的痕跡-」 [拙文自評]

2018c「鉛筆で紙に線を引く -考古学的痕跡-」『現代思想』第46巻 第13号(2018年9月号 特集=考古学の思想)青土社:101-113.

遥かな過去を掘り起こし、まだ見ぬ未来を創造する。
考古学はその発見のたびごとに人類史を書き換え、私たちの人間や社会をめぐる常識を揺さぶり続けてきた。
本特集では、考古学の最前線から、現代思想やイメージ論への拡張的な側面まで、その尽きせぬ魅力を掘り起こしていく。(出版社宣伝文より)

書店発売は、8月27日予定とのこと。

デリダの灰に始まり、インゴルドの線を経由して、ショーバン先生のことばに終わる。
思想・哲学をメイン・フィールドとする完全アウェイの試合で、持てるもの全てを出し尽くす。
さて、その採点結果は?

一言で言えば「縦横無尽」。英語で言えば'boundlessly'か。
大胆なサイドチェンジ、オープンスペースへのロング・フィード、2列目・3列目からの駆け上がり、ヒールとスルーを交えた多彩なワンツー、流動的な全員攻撃そして全員守備、これぞ「リビング・フットボール」。

途中から様々なブロッブ(blob)が結びつきながら、思いもよらない化学反応を示し始めた。
あるいはバラバラだったピースが然るべき場所に納まっていく、とでも言おうか。
第2考古学の目標である、本質的で根源的な事柄に少しでも接近すること。
果たして?
確かに言えることは、一つ。
ここに一つの痕跡を記した、ということ。
後年、何処かの、誰かが、その痕跡を確かめてくれるだろう。

振り返れば(後知恵的な気もするが)、以前にも引用した以下の文章に導かれて、という気がする。

「考えるということは積み重ねだとか思ってる奴、最低。
 積み重ねちゃダメなんだよ。
 ガンガン擦り減らして、ガンガン引き算して、ギリギリの究極の線をピシーッと引いていく。…
 ピシーッと線が引かれる。
 そうすると、重要なこと、どうでもいいことが、配置が変更されて、
 どうでもいいと思われたことが、実は重要なことなんだということが、浮き出てくる。…
 絵を描くとき、一本の線を引くときに…悩むわけですよ。
 たかが一本の線に、悩んで悩んで、そしてグイッていう。…
 タブローに…グイッ。
 そのときディメンションが動く。
 そこで終わり。また振りだし。
 地と図が産出される、一瞬だけ。
 残るのは、痕跡。」
(山の手 緑・矢部 史郎1999「高円寺ネグリ系、運動を紹介しようとして失敗」『文藝』第38巻 第2号:172-177.における山の手 緑の発言、2001『無産大衆神髄』河出書房新社:57-58.に収録)

そう、「鉛筆で紙に、グイッと、線を引く」!
そして、「残るのは、痕跡。」!

タグ:痕跡
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