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吉田ほか2017「未来考古学 第1回 ペットボトル」 [論文時評]

吉田 泰幸+編集部 2017 「未来考古学 第1回 ペットボトル」『縄文ZINE』第7号、ニルソンデザイン事務所:24.

論文というよりエッセイというか、B5版1ページに満たない実測図つきの短文である。
吉田 泰幸氏は、金沢大学の文化資源学セミナーで中心的な役割を果たされていた。

「金属製長方形祭壇に伴う容器型製品が発見された「みなとみらい遺跡」は、人工的な地層に形成された遺跡である。地層は2000年代前後に作られ、比較的年代を推定しやすい。このころの二ホンはエド期という安定期が終わってすぐの時代で、短い期間に革命や戦争が立て続けに起こったため、混乱期だったと言えるだろう。そうした不安定な時代の精神的側面を支えていたのが容器型製品であるというのは、4000年代の研究者によってすでに指摘されている。」

ということで、今から何千年か後の未来の考古学者が現代の物質資料を考古学的に観察したらどうなるかということを真面目に?論究したものである。
祭壇に納められたプラスチック製容器型製品は、胴部がくびれたものとくびれていないものの二種に識別され、くびれた類は女性像、くびれていない類は男性像と考えられた。それぞれの開口部に「短小型容器」が組み合わさることが判明しているが、短小型容器製品のみが大量に発見される理由は不明とされている。
しかし祭壇内の容器型製品は全て短小型容器製品が装着されているのではないか? 短小型容器製品のみが大量に発見されるのは、祭壇に付随している丸い穴が開いているプラスチック製の小祭壇において見出されるのではないのか? 金属製祭壇に納められた容器型製品と付随するプラスチック製小祭壇に納められた容器型製品の遺存状況の違いについては、どのように理解すればいいのだろうか?

「鎮魂儀礼によって廃棄された」と考えられる容器型製品は、なぜ潰れた状態で発見されることが多いのか? 廃棄時に意図的に変形しやすい材質を選択している理由は何なのか? 金属製祭壇に納められた容器型製品にはビニール製碑文が付着しているのに対して、小祭壇内の容器型製品では意図的に剥がされているその意味など、まだまだ考究すべき課題は多そうである。

「祭壇内部から頻繁に発見される4つのサイズの円盤状製品」については、色調や材質の違いあるいは中央部の円孔の有無といった差異から「4つのサイズ」というより「4つのタイプ」とすべきではないかという貴重な意見を頂いた。祭壇にお賽銭は付き物である。

「未来考古学」の英訳は、"(mis) reading the present" である。"Reading the Past"のホダー先生もビックリだろう。

くびれた類の容器型製品の各種デザインに、女性の乳房をリアルに表現したことを読み取ったり、あるいはさらに胎内回帰や幼児回帰までをも読み込むあたりに、現在の「日本考古学」における突出した「考古学的解釈」に対するメッセージとして読み取ることもできよう。

これは当然のことながら「私たちはなぜ石棒を樹立させたがるのか?」という疑問を提示した緑川東問題にも通じる問題提起である。

筆者の吉田氏には、これからも考古学的想像力を「ノビノビ」と追及されるよう、次回以降の連載に向けてエールを送りたい。


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