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WAC-8が浮かび上がらせた世界の中の「日本考古学」 [拙文自評]

五十嵐 2016e 「WAC-8が浮かび上がらせた世界の中の「日本考古学」」『東京の遺跡』第106号、3-4.

「また研究発表のあり方についても、強い印象を受けた。もちろん各研究者の発表を聞くのが主眼なのだが、イメージとして発表はあくまでも議論の材料に過ぎず、より重視されているのは発表後の発表者と聞き手の間でなされる議論のように思われた。あらかじめコメントを述べる人が決められており、当たり障りのない質問がなされて無事?に終了するのが一般的な「日本考古学」との大きな違いである。」(4.)

こうした議論に参入するには、英語力はもとより、研究というものに対する心構え、研究姿勢というものから鍛え直さなければならないだろう。
トレーニングとしてのディベートというスキルが決定的に欠けているお国柄で教育を受けた者は、自らが意識的に身に付けていかなければならない。

WACには、以下の11の常置委員会(Standing Committees)が設置されている(WAC-8要旨集:49-53.)。
国境なき考古学者(Archaeologists without Borders)、表彰(Awards)、相互交流(Communications)、倫理(Ethics)、グローバル図書館(Global Libraries)、助成(Grants)、会員(Membership)、出版(Publication)、公教育(Public Education)、返還(Repatriation)、学生(Students)

返還委員会の部分(53頁)を紹介しよう。

返還(Repatriation)
委員長:クラシダ・フォルデ(イギリス)・ジョー・ワトキンス(アメリカ)
委員:フランチェスカ・キュビロ(オーストラリア)、ローレンス・フォナータ(ソロモン諸島)、ジェーン・ヒューバート(イギリス)、キャスリン・ラスト(イギリス)、ロバート・レイトン(イギリス)、ポール・ターンブル(オーストラリア)、ボブ・ウェザーオール(オーストラリア)
WACは遺体と共に特に文化的に重要とみなされる副葬品が多くの異なる集団にとってその意味が重層的であることを認識する。WACの倫理綱領、1989年制定のバーミリオン協定、2005年11月のワイパパ・マラエでの先住民中間会議での第2項、2006年1月大阪におけるWAC評議会で確立した枠組みに基づいて作業するWAC返還委員会は、返還問題に関する対話を促進するように努めている。
WAC本会議および中間会議で持たれるセッションを通じて、この特別な問題に関する議論を喚起する役割を担っている。さらに返還委員会は国際的な会員の支持により、返還問題に関する地域的・全国的・国際的な議論と政策の影響について様々な見通しと洞察を提供する。

「自らの姿・内実を知るには、ドアを開けて外に出て自分とは異なる人たちと語り合うことが欠かせない。どこが同じで、どこが異なるのか。自分は今どのような方向に向かっているのか、世界の流れの中で自分はどのような位置を占めているのか。より良い世界を作るには、自分はこれから何をすればいいのか。部屋に閉じこもって身内で論じているだけでは、こうしたことは最後まで判らないだろう。」(4.)


タグ:WAC
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