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全国遺跡資料リポジトリ・ワークショップ(報告) [研究集会]

全国遺跡資料リポジトリ・ワークショップ in 東京
文化遺産の記録をすべての人々へ! -遺跡資料リポジトリの自立的な展開をめざして-

日時:2011年11月26日(土) 13:00~17:30
場所:東京都千代田区一ツ橋 国立情報学研究所 12階会議室
主催:国立情報学研究所CSI委託事業(領域2)全国遺跡資料リポジトリ・プロジェクト

14:30~15:00 「デジタルとアナログの狭間で -埋蔵文化財行政の場合- 」

1.重要課題に関する現状認識
2009年11月: 「シンポジウム・遺跡リポジトリ」大阪大学
2010年5月: 『発掘調査のてびき』文化庁文化財部記念物課監修
2010年12月: 「全国遺跡資料リポジトリ・オープンカンファレンス」大阪大学
2011年8月: 「提言 歴史学・考古学における学術資料の質の維持・向上のために -発掘調査のあり方を中心に-」日本学術会議 史学委員会 文化財の保護と活用に関する分科会

2.埋蔵文化財行政(考古学)
アナログとデジタルの併用(アナログ+デジタル⇒デジタル)
現場でのデジタル化は、作業工程の短縮・省力化が導入の直接的な動機となっている。デジタル化できない手作業部分(アナログ作業)についても、整理作業段階で全てデジタル化されて、報告書印刷段階ではフル・デジタル化されている。しかし最終形態は、アナログ作品が要求されており、デジタル・データは死蔵されている。
包蔵地→調査区→データ→報告書→<遺跡>
場・もの→データ(デジタル・アナログ、考古記録)→報告書収蔵問題→リポジトリ
      もの(考古資料)→遺物収蔵問題→デジタル文化財

3.考古学(埋蔵文化財行政)
月刊「考古学ジャーナル」動向の動向(【2006-06-08~06-15】参照)
1967年~:「基本5時代区分」
1988年~:「6時代東西12項目体制」
1996年:動向特集号欠号(存続の危機)
1997年~:「地域細分化体制」スタート
1999年:「7時代40項目体制」完成
2011年:45項目中11項目(24%)欠落、もはや末期的症状としか言いようがない
動向の動向、時空間項目の細分化、項目執筆者の固定化、項目欠落率の増大
増大する考古情報に関するアナログ的対処のひとつの姿形

4.掘るだけなら掘らんでもいい話(藤森栄一)
及川昭文ほか1985「座談会 考古学におけるコンピュータの利用」『考古学調査研究ハンドブック 3』
水山昭宏1997「報告書の電子化」『考古学ジャーナル』第418号
杉本 豪・五十嵐 彰2007「埋蔵文化財センターにおける情報デジタル化に関する個人アンケート調査報告」『日本考古学』第24号
レンフルー&バーン2007『考古学 -理論・方法・実践-』
文化遺産をすべての人びとへ! 内向きの論理から外向きの論理へ
「公(パブリック)」な存在である考古資料(埋蔵文化財)を「公(パブリック)」な存在である市民・社会へと「仲介」する役目(メディエーター) 岡村勝行2006
提示されているものに対するクリティシズム
提示されていないものに対するクリティシズム
報告書(考古誌)の変化から「日本考古学」の変化へ

*当日発表のパワーポイント資料は、後日プロジェクトのウェブにて公開される予定とのこと。

ある発表者の方から、「利用と保存の視点にたった場合に、印刷物(冊子)とPDFは、どちらかがあれば片方は不要という関係ではなく、双方の短所を補い合う形で利用するものということができます。」(福山栄作・昌子喜信2011「デジタルデータの保存と利用」『考古学研究』58-2:108.)という文章を引用されて、その趣旨に諸手を挙げて賛同の意が示された。
ならば、「報告書は、記録媒体自体の劣化のほか、媒体の規格変更や製造中止など、いくつかの問題が指摘されるデジタルデータではなく、・・・」(『発掘調査のてびき』整理・報告書編:2.)と、ことさらデジタルデータの欠点を指摘することによって「紙媒体による印刷物」の優位性を主張する必要はないのではないかとも思えるのだが。

プロジェクト継続のために、何とか資金を調達しなければならないという切実な訴えもなされた。発掘調査費の一部でも廻せれば、問題はすぐさま解決するだろう。公的な文化財を公的な人びとに届けるというデジタル・データの公開こそが消失した国民共有の埋蔵文化財を発掘調査し記録保存した本来の法的趣旨に沿うものではないか。しかし一方で、会計検査院からは「報告書」の発送費の削減まで求められているとの当事者からの現実的な発言も。
家に帰れば、1995年の事故以来ほとんど稼働していない「もんじゅ」の維持管理費だけで1日あたり5千万円以上かかっている、という新聞報道が。
つくづく何とかならないものか、と思う。

最も喫緊の課題は、本来ならば主体的な活動がなされなければならない「日本考古学」への啓蒙である。そうした趣旨での来春に向けての新たな動きもスタートしそうである。


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ハシモト

こんばんは。
段々と取り組みが形になってきているんですね。
国立情報学研究所は全国の大学と組んでいるようですが、自治体などの調査機関がこの関係に加わっていないのは、なにか理由があるのでしょうか。
by ハシモト (2011-12-04 23:33) 

伊皿木蟻化(五十嵐彰)

当初は、各県の国立大学図書館が中心となってそれぞれのサーバを使って登録する「代行登録」形式でしたが、近年は各自治体が国立情報学研究所のクラウド・サーバを用いて行なう「直接登録」もなされつつあるようです。詳しくは、本ブログにリンクしてあるリポジトリ・プロジェクト・ウェブの「コミュニティサイト」から「プロジェクト・パンフレット(2010年度版)」のP.8などをご覧いただければと思います。
by 伊皿木蟻化(五十嵐彰) (2011-12-05 19:00) 

ハシモト

国の看板で、大学のネットワークに自治体の持っている情報をのせるかたちでしょうか。直接登録へ移行すれば取り組みがさらに加速しそうですね。
by ハシモト (2011-12-06 02:18) 

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