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シンポジウム:遺跡資料リポジトリ [研究集会]

「シンポジウム:遺跡資料リポジトリ -遺跡調査報告書の電子化と利用促進のために-」

日時:2009年11月27日(金) 13:00-17:30
場所:大阪大学付属図書館 総合図書館ホール
主催:国立情報学研究所CSI委託事業(領域2)遺跡資料リポジトリ・プロジェクトWG
共催:デジタルリポジトリ連合(Digital Repository Federation:DRF)

「趣旨 国内で発行される遺跡調査報告書は、考古学・歴史学分野におけるきわめて重要な基本資料であるが、発行部数も限られており、教育・研究や学術調査活動のために十分に利用できる体制にあるとは言いがたい。遺跡資料リポジトリプロジェクトはこれらの報告書全文を電子化しWeb上で公開することを目標とするもので、「報告書抄録」の項目をリポジトリ仕様(OAI-PMH)のメタデータに使用し、これに電子版の報告書をリンクさせることで、多様で柔軟性をもつ汎用的な提供の仕組みを構築する。
本シンポジウムでは、様々なステークホルダーからの講演や事例報告等に基づき、冊子体と電子メディアが相互補完的に機能し、貴重な文化遺産及び文化財に関する情報がWebを通じて広く公開・提供され、教育・研究・調査活動や一般社会で広く利用される環境構築について考える。」(「シンポジウム:遺跡資料リポジトリ -遺跡調査報告書の電子化と利用促進のために-」予稿集より)

残念なことに開催後にその存在を知った次第(marginBlog【2009-11-30】にてホームページが紹介されている)。その「趣旨」については全く「異論」なく、全てにわたって「その通り」と強くうなづく。

「発掘調査の過程で生み出された様々なデジタル・データが、誰でもアクセスできるようなエリアに貯蔵されている、それがデジタル・アーカイブの一つの理念である。そのためには、どのようなデータをどのように扱うのか、調査から公開・普及・研究、そして更に調査に立ち戻る考古学という学問全体の枠組みを見据えたシステム構築が求められる。それは、膨大な公的資金を投入してなされてきた事業の成果を何らかの形で還元すべく義務付けられている私たちの責務でもある。」(杉本・五十嵐2007「埋蔵文化財センターにおける情報デジタル化に関する個人アンケート調査報告」『日本考古学』第24号)

「リポジトリ」とは、聞きなれない用語だが、Wikiによれば以下のように解説されている。

「機関リポジトリとは、研究機関がその知的生産物を電子的形態で集積し保存・公開するために設置する電子アーカイブシステムである。
ここでいう知的生産物としては、大学にあっては、学術雑誌掲載論文(査読を経ていない状態の版(プレプリント)や査読を経た状態の版(ポストプリント)のいずれをも含む)や電子化された学位論文、紀要などを指すほか、日常的な教育・研究活動の中で生み出される文書、講義ノート、教材等も含まれる。
研究機関が機関リポジトリを設置する主要な目的としては、次の二つが挙げられる。
1.機関の研究成果を自主的に保存・公開することにより、オープン・アクセス化に寄与すること。
2.出版されないものや失われやすいもの(灰色文献。例えば学位論文や研究報告書類)を確保し保存していくこと。」(Wikipedia「機関リポジトリ」より)

これは、図書館特に大学などの付属図書館が、コレクションの構築、分類整理、供用、長期保存などの観点から電子保存に取り組んでいるものが主流となっているようである。こうした試みが、ようやくというか遅まきながらというか考古資料・考古記録についてもなされつつあるわけである。

「遺跡資料リポジトリの役割・特徴
遺跡資料リポジトリ・システムは、考古・歴史分野における基本資料である遺跡調査報告書の全文電子化を推進し、ネットワークから提供することで、遺跡固有情報や電子データの特性を生かした利活用を促進する国立情報学研究所のCSI委託事業(領域2)の学術情報基盤整備プロジェクトです。本システムにより、従来の冊子体報告書の通覧性、再現性、保存性に加えて、電子報告書の提供するアクセス性、速報性、省スペース性など相互補完的に機能させることで、当該分野の資料の利活用を推進します。
・調査報告書の電子化・公開・保存 ・収録資料範囲 ・遺跡資料リポジトリのメタデータ仕様 ・考古・歴史分野におけるサブジェクト・リポジトリ ・分散構築、共同利用プロジェクト ・多様な検索・利用システム セルフアーカイブを基本とした管理・運用 ・管理・運用負荷の軽減と収納スペース ・各種メディア(印刷・電子メディア)の特性を生かした利用支援」(「遺跡資料リポジトリ -発掘調査報告書の流通促進のために-」パンフレットより)

私などにはよく理解できない部分や用語もあるのだが、基本的にはいいこと尽くめのように思われる。
昨年度(2008年度)は島根・鳥取・岡山など中国5県域にて運用システムを構築し、今年度(2009年度)からは対象を兵庫・高知・宮崎など12府県域に拡大し、来年度(2010年度)にはさらに全国規模の統一的枠組みによって調査報告書の電子化整備・確立を図るとのこと。

シンポジウム当日には文化庁職員の方が「基調講演」をされたようであるが、内容は「発掘調査報告書をめぐる諸問題」が中心だったようで、予稿集を見る限り「やや腰が引けている」という印象を受けた。本来ならば、文化財行政の中心ともいうべき文化庁自身が主体となって、全国の自治体および埋蔵文化財センターなどに指示し、また日本考古学協会あるいは情報学研究所や文化財研究所など関連機関を巻き込みつつ推進するべき性質のものではないのかと思うのだが。


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