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<層位‐接合>関係 [総論]

【問題】:「同一層位内での集中部間の1類接合と切り合い遺構間あるいは累重層位間での2類接合の意味の違いとは?」

「同一層位内」におけるものとものの共存関係は、当該層序が堆積した期間内における同時性、もう少し正確に言うと同時廃棄を示す。
1類接合(剥片剥離面で接合する資料)とは、剥片生成時の前後関係を示す。そして異なる集中部(場)から検出された1類接合の由来について、9通りの想定を示した(五十嵐2003b「砂川F/A問題」)。

ある場所で製作し廃棄し、次の場所でさらに製作し廃棄した。
ある場所で製作し最初の剥片を廃棄し、次の剥片を次の場所に廃棄した。
ある場所で製作し最初の剥片を次の場所に廃棄し、最初の剥片を製作した場所に廃棄した。
ある場所で製作し廃棄し、別の場所で製作した剥片を、さらに別の場所に廃棄した。
ある場所で製作し、それぞれ異なる場所に廃棄した。
ある場所で製作し次の場所で廃棄し、別の場所で製作し廃棄した。
ある場所で製作し次の場所で廃棄し、その場所で製作し前の場所に廃棄した。
ある場所で製作し次の場所で廃棄し、その場所で製作し別の場所に廃棄した。
ある場所で製作し別の場所で廃棄し、次の場所で製作しさらに別の場所に廃棄した。

要は、考古資料は廃棄された場所(資料が検出された場所)で製作されたとは限らないということ。
更に、ものが示す製作の前後関係は、廃棄された場所(資料が検出された場所)が形成された前後関係を示すとは限らないということである。

しかしこうした留保を念頭に置きつつ、複数の接合関係が得られ、それらがある一定の傾向を示すとするならば、集中部が形成されるに至った経緯(集中部間関係)についても、ある蓋然性のもとで述べることは可能であろう。

一方、「切り合い」(減重複)ないしは「累重」(加重複)という場(層位)の相互関係は、堆積時における明確な時間的前後関係を示す。
「累重」(重複する層位関係)間での接合という場合には、層序区分の統合という操作を介在させることで、累重関係を同一関係に読み替えることも可能であるが、切り合い(マイナス遺構面の重なり合い)の場合にはそうもいかない。
ある遺構の製作(構築)・使用後の廃棄時に埋没した資料と、その遺構を壊して製作(構築)・使用された別の遺構の廃棄時に埋没した資料が接合するということの意味は?

一つは、同時性を示す2類接合資料について、廃棄に至る過程において遺構切り合いに相当する時間差を認めるものである。例えば、一方は破損直後に廃棄されるが他方は再利用などの要因で破損から廃棄までの間に相応の経過時間を有していたような場合である。

今ひとつは、破損後に同時に廃棄されるもののその後の埋没過程において差異が生じたとする。例えば、切られた遺構に含まれていた資料が切る遺構の構築時に掘り返され、切る遺構の埋没時に再び含まれるような場合(掘り返し)である。あるいはある同一場所に廃棄・埋没していた資料がそれぞれの異なる遺構の埋土に含まれるような場合(埋設遺構など)である。

課題に関する結論としては、前者(同一層位内での1類接合)は層位という「場」が示す同時期における「もの」の時間差が読み取りうるのに対して、後者(切り合い遺構間での2類接合)は「もの」が示す同時性における「場」が示す時間差が読み取りうるだろう、ということ。

更に、本問題における「接合関係」を「型式関係」に置き換えたらどうなるか、といった様々なバリエーションが考えられる。本問題に限定しても、未だに語られなければならない多くの事柄が残されている。しかし私たちに、その可能性を探りうるだけの十分な用意と心構えがなされていない。
考古学という学問が対象とする様々な資料とその存在形態、「もの」と「場」の相互関係について、考古学という学問は未だ語るべき事柄の一端にも触れていないように思われる。
私たちがいま努力を傾注すべき領域とは、何か?


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